歯並びを矯正する方法と矯正すべき不正咬合の種類

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当院には、子供から大人まで、たくさんの方が歯列矯正治療のご相談にいらっしゃいます。「歯列矯正は子供の頃にするもの」と考えがちですが、大人が歯列矯正治療を受けることもできます。近年は特に大人から「歯並びが気になっていて」「子供の頃に歯並びを矯正したのですが、後戻りしてしまって」という相談を受ける機会が非常に多くなっています。「歯科医院に足を運ぶのは虫歯の時だけ」という考え方はもはや過去です。歯の審美に対する意識やニーズの高まりを感じます。

 

大人から子供まで受けていただくことのできる歯並びの矯正治療には、どんな治療法があるのでしょうか。また、歯列の乱れとは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。大人にもニーズの高い歯並びの矯正治療と、歯並びの基礎知識についてお話します。

 

■歯並びはなぜ矯正した方がいいのか

歯並びを美しく整えることは、日常生活をより彩り豊かにしてくれます。なぜなら、歯並びがきちんとしていると、生活や健康にたくさんのメリットがあるからです。

 

歯並びが良いと、食事が楽しくなります。咬み合わせが悪いと、パスタなどの麺類を咬み切り難くなってしまいます。弾力のあるステーキも、咬んでいるうちに歯やあごに負担をかけてしまい、「歯並びのせいで物をかみ砕けず飲み込み難い」「食事の後にあごが痛い」といった事態を引き起こしてしまいます。彩り豊かな生活には「楽しい」「嬉しい」「美味しい」を欠かすことはできません。しかし、歯並びが乱れていると、「美味しい」に直結する食事が負担に感じてしまうことがあるのです。美味しい物をきちんと咬めて、飲み下すことができる。食事の後に歯やあごが辛くない。これはとても大切なことです。

 

また、彩り豊かな生活には、笑顔も欠かすことができません。歯並びが乱れていると、笑うことをためらってしまいませんか。にっこり微笑んだ時に乱れた歯並びが見えてしまうことを気にして、自然な表情を浮かべることが難しくなります。これは、とても残念なことです。歯並びが良いと、楽しい時や嬉しい時に、自然ににっこりと笑うことができるようになります。これも、歯並びが良いことによるメリットです。

 

歯並びは素敵な日常生活にだけ影響を及ぼすわけではありません。歯並びが悪いと、将来的な健康不安が出てしまいます。歯やあごに負担をかけることにより、顎関節症や、歯の割れや欠け、頭痛や肩こりに繋がってしまいます。また、歯並びが悪いと、無理して食べ物を咬もうとしますので、顔の筋肉やシルエットにも影響を及ぼします。食べ物を咬むことが十分にできないため、連鎖的に胃などにも負担をかけることになります。歯並びが良いということは、それだけで、健康面のメリットがあるのです。

 

歯科医院で早めに治療したい口のトラブルは、虫歯や歯肉炎だけではありません。歯列の乱れも、代表的な口のトラブルになります。健康や生活に及ぼす影響や審美を考え、早期に歯列矯正などで治療することが大切です。

 

■歯並びの矯正が必要な不正咬合とは

 

正しい歯並びの矯正とは、「見た目を美しくすること」だけが重要なのではありません。歯並びが乱れている状態とは、正しい咬み合わせになっていない(不正咬合)状態を指します。ですから、正しい歯並びの矯正とは、「正しい咬み合わせに導く」ことを意味します。

 

当院に寄せられる相談に「自分は歯並びを治した方がいいでしょうか」というご相談があります。見た目は特に問題がなくても、きちんとした咬み合わせができていないなら、「歯並びを治した方が良い」という結論になります。また、咬み合わせができている方でも、歯やあごに負担をかけているケースが見受けられます。

 

歯並びは永久歯が生えた時点で決まるのではなく、癖も大きく関係します。咬み合っているから歯並びに問題がないわけではなく、癖でとりあえず咬めているというケースもあります。歯並びの矯正を検討した方がよいかどうかは、第1に、歯科医師に咬み合わせをチェックしてもらい、正しい咬み合わせになっているかどうかを判断してもらうという流れで決めると安心です。

 

ただし、歯科医師が診察するまでもなく、咬み合わせが正しくできていないと、自分自身ですぐに判断できることがあります。「虫歯や歯槽膿漏になりやすい」「発音し難い。特にサ行の発音が難しく感じる」「顔の左右バランスに違和感がある。歪みを感じる」「口臭や歯茎の腫れで悩んでいる」などに心当たりがある場合は、咬み合わせが正しくできていない可能性が高いと考えられます。

 

不正咬合には次のような種類があります。違和感を覚える場合や、次のような種類に当てはまっていると考えられる場合は専門医師の診察を受け、歯並びを矯正する治療を検討することが重要です。

 

① 叢生

「叢生(そうせい)」とは、「八重歯(やえば)」や「乱杭歯(らんぐいば)」などとも呼ばれる不正咬合の一種です。あごの大きさや歯と歯の間のスペースに対して歯が大きすぎた場合などに見られる不正咬合で、歯がちぐはぐに生えたり、生え方に傾きが見られたり、重なるかたちで生えてしまっていたりします。

② 開口

「開口(かいこう)」とは、奥歯は咬み合わさるのに、前歯は咬み合わさらない歯列の状態を指します。これも不正咬合の一種です。小さな頃に指をしゃぶる癖があった方などによく見られる、癖や生活習慣が原因になっている可能性のある歯並びです。

③ 上顎前突・下顎後退症

「上顎前突(じょうがくぜんとつ)」と「下顎後退症(かがくこうたいしょう)」は、「出っ歯」とも呼ばれる不正咬合の一種です。上あごが突出してしまっているために咬み合わせが悪くなっているタイプと、下あごが後退しているために咬み合わせが悪くなっているタイプがあります。どちらも、上あごが前に出ているように見えます。

④ 過蓋咬合

「過蓋咬合(かがいこうごう)」は、上の歯列が下の歯列に重なって、下の歯列が上歯列に覆い隠されてしまうという不正咬合の一種です。上下の歯列が咬み合うのではなく、重なるように見えます。歯列自体は綺麗に見えることもありますが、咬み合わせは問題のある状態です。

⑤ 反対咬合

「反対咬合(はんたいこうごう)」は、「受け口」とも呼ばれる不正咬合の一種です。上顎前突や下顎後退症とは反対で、下の歯列が突出しているように見えるという特徴があります。反対咬合には、下あごが成長して突出してしまっているタイプと、下の歯列が傾いだかたちで生えてしまい、突出しているように見えているタイプがあります。

⑥交叉咬合

「交叉咬合(こうさこうごう)」とは、咬み合わせが横にずれてしまっている不正咬合の一種です。前歯の上の歯は、ちょうど下に位置する前歯と咬み合うことになります。しかし不正咬合の場合、横にずれてしまっているため、前歯ではなく前歯の横の歯と咬み合うことになります。このように、上または下、あるいはどちらも咬んだ時に横にずれている状態のことをいいます。

 

~咬み合わせについての豆知識~

 

■歯並びの矯正治療にはブラケットやマウスピースを用いる

 

不正咬合は、将来的な健康のことも考えて、早めに矯正治療をすることが望ましいと言えます。歯並びの矯正治療は銀色のワイヤー器具を使うという印象のある方が多いようですが、近年は他にも歯並びを治す方法があります。歯の状況に合わせていくつかの方法を併用することもできます。

 

ほとんどの方法が子供だけを対象にした歯並びの矯正治療法ではなく、大人も受けることのできる治療法となっています。口の中の状態に問題がないのなら、高齢でも歯並びの矯正治療をスタートすることができます。

 

①ブラケットによる歯並びの矯正治療

ブラケットとは、歯の装着する器具のことです。歯列矯正治療の印象につきものの銀色のワイヤーをブラケットといいます。歯にワイヤー状のブラケットを装着することにより、徐々に歯を動かし、歯列を調節しながら矯正する治療方法です。

 

近年のブラケット治療では、必ず銀色のワイヤー器具を使うわけではありません。装着しても目立たないセラミックやハイブリッドセラミック、プラスチック、特殊な樹脂(ポリオキシメチレン)のブラケットも登場しています。ブラケット自体もかなり小型化していますので、ブラケットの素材によってはブラケットがほとんど目立ちません。

上下の歯列を一緒に矯正したい場合や、叢生や反対咬合を矯正する場合に向く治療法です。

 

②舌側矯正

ブラケットは基本的に歯の表面に装着します。目立たない素材のブラケットを選んでも、口を大きく開けた時にはどうしても見えてしまいます。歯の色によっては、白系や透明なブラケットでも目立ってしまうことがあります。舌側矯正は、ブラケット器具を歯の裏側に装着して歯並びを治す方法です。

 

歯の裏側なので、矯正器具は見えません。どうしても器具を見られたくない方や、人と接する仕事をしている方はこちらの方法で矯正を進めることもできます。ただし、舌の裏側に装着することによって、舌がぶつかり痛みを感じることがあります。ブラケットで歯並びを治療する場合は、ライフスタイルに合わせて、患者様のご要望をよく確認して治療を進めます。

 

③マウスピースによる歯並びの矯正治療

歯並びを矯正するためのマウスピースを作成し、毎日装着して少しずつ歯列を整える矯正治療法です。歯並びの状態によっては、マウスピースによる歯並びの矯正治療では処置が難しい場合があります。比較的、歯並びの乱れが軽度の方や過去に1度歯列矯正をしている方に向きます。また、周囲に矯正治療をしていることを知られたくない方にも向く治療法です。

 

歯並びの矯正に使うマウスピースは透明な「クリアアライナー」というマウスピースです。マウスピースの他には特に器具を装着する必要がないため、マウスピースを外せば、通常通りのブラッシングも可能です。ブラケットよりも痛みが少ないと言われています。

矯正治療の進み具合に合わせてマウスピースを交換します。基本的にマウスピースのみで歯並びの矯正を進めるため、金属アレルギーのある方にも安心して利用していただくことのできる方法です。

 

赤坂歯科診療所~歯列矯正

■最後に

歯並びは審美に重要な影響を及ぼすだけでなく、健康にも関係する口のトラブルです。歯並びの治療は子供だけでなく、幅広い年代の大人にも受けていただくことのできる治療ばかりです。将来的な健康のため、そしてより良い生活のために、歯並びについて今一度考えてみてはいかがでしょうか。

 

「自分の歯並びはどうなの?」「自分に合った歯並びの治療法はどれなの?」「自分の年齢でも歯並びを治せる」など、どんなことでもお気軽にご相談ください。歯はより良い生活のために重要な部位です。将来的な健康も考えて、最適な治療をご案内いたします。

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